お米を支える技術
~お米作りに対する私たちの想い~

つじ農園では、お米作りを通じて「食べる人」「作る人」「作る人を支える人」が集まり、未来につながる村づくりを行っています。

私は、2016年にこの地域で農地を集積し、米作りを始めました。
これまでこの地で農業を続け、農村を守ってきた皆さんのものを引き継ぐ形でした。

私は製造業の会社で航空宇宙分野や、高額なコンシューマー製品に関わっていました。これらの仕事で得た知見や人脈、コミュニケーションの方法を故郷の米作りに生かしたい。そのような思いで米作りを始めました。

以来、地域の皆様やお客様に支えられ、少しずつですが順調に事業を発展させることができ、2020年5月に株式会社つじ農園として、新しい体制で再出発しました。

これまで蓄積してきた安全なお米を作る技術や、品質管理、仲間と力を合わせ、これまで以上においしくて、安全、そして農村のぬくもりを感じられるような食品を全国のお客様にお届けします。

私たちの身体は、私たちが食べたもので作られています。
特に、お米は毎日のように食べる重要な食べ物です。
お米と、お米を生み出す農村に関る創造的な仕事ができることを誇りに思い、事業を営んでまいります。

私たちの取り組みを見てください。
そして、時にはみんなで集まってごはんを食べましょう。
みんなで食べるごはんは本当に、おいしいですものね。

「たらふく」を生み出す農法

つじ農園が追求しているのは循環型の米作りです。

化学肥料は、農作物の収穫量を効率的かつ格段に増やし、私たちの食糧を支えていますが、肥料の製造に大きなエネルギーを使います。一方で、私たちの周りをよく見ると、食品製造中に不要になる資材がたくさんあります。例えば、精米所から出る米ぬか、醤油工場から出る醤油かす、大豆生産中に選別されたくず大豆などです。これらを稲の育っていない秋の時期に土にすき込んだり、発酵・堆肥化させて春先の元肥として使用します。

三重県の各地で新米が出始める9月の上旬になると、つじ農園の近くの精米所には、たくさんのお客さんが来て新米の精米をしていきます。玄米を精米すると、外皮の部分が米ぬかという形で精米所のタンクに溜まります。つじ農園では精米所のオーナーさんにお願いして、この米ぬかを引き取り、秋の田んぼに散布します。散布された米ぬかは土壌中の微生物の活性を促し、土の中にあるいろいろな有機物が分解され、翌年の稲の栄養となります。

食品メーカーさんからいただく醤油かすや酒粕は、2月のまだ少し寒い時期に材料をかき混ぜて、袋に入れて積んでおきます。ついでに近所の山から微生物の固まりを採取してきて一緒に混ぜ込みます。数週間すると袋の中で発酵が始まりおいしそうな香りがしてきます。色も少し変化してきます。充分に発酵が進んだら、この堆肥を水入前の田んぼに投入します。

詳しい様子は下記の動画(5:00頃)をご覧ください。

しっかり発酵させた資材を使うと、本当においしそうな香りがただよいます。この香りに包まれて作業するので、気分もいいんです。

たらふく 有機栽培米

(有機JAS認証取得 2020年)

上記動画でご紹介した肥料を使って、さらに農薬を一切使わずに栽培したお米です。

田植の苗は、一般的な稲の苗よりも大きく育てて丈夫なものを使います。大きく苗を育てようとすると通常の育苗方法とは異なり、手間をかけてゆっくり長時間育ていることになります。

通常の育苗は20日間程度ですが、この苗は2か月ほど育てます。こうして育てた愛着のある苗を田植した後に数回(たとえば6月は毎週)に分けて肥料を散布します。

同時に田んぼの中に生える雑草を除去するために、除草機や手作業で草を取ります。雑草を取らないと、本来苗が吸うための養分を雑草に奪われてしまうからです。

他地域には雑草の全く生えない田んぼつくりをする名人もいらっしゃいますが、つじ農園の田んぼは毎年元気に雑草が生えてきますので、その対応に追われることが多いです。

そうして育てたお米をJAS規格に則って区別管理し、米穀検査を受けた後に等級付けされたものを出荷直前に精米し、お届けしています。

全国からご注文いただくプレミアムな想いのこもったお米です

有機JAS認証機関:民間稲作研究所認証センター 認証番号:S-299

たらふく 特別栽培米

有機栽培、自然栽培は素晴らしい体験ですが、穫れ高がすくなく手間もかかるため、すべてそれらの方法で生産すると、コストが非常に高いものなってしまいます。

たらふく特別栽培米では、つじ農園の有機栽培技術のエッセンスを使い、よりお値打ちなお米も生産しています。

特別栽培農産物というのは、農林水産省で定められたガイドラインで、地域の普通の栽培方法(慣行栽培)に比べて、「化学肥料の使用量」「農薬の使用回数」が半分以下のものが名乗ることができます。

つじ農園のある地域では、以前より農薬の使用が少なく、農薬のヘリ散布も行っていませんでしたので、これまでの良い所をそのまま引き継ぐ形で取り組んでいます。

またスタッフは有機栽培、自然栽培と同等の手間暇をかけて、しっかりと丁寧に育てています。

地域の人たちが昔から代々食べてきたお米なので、その美味しさと安全性はしっかりと保証します。

多くのお客様から支持される、スタンダードなおいしいお米です。

「たらふく」の生まれる土地

千年村~津市大里睦合町山田井地区(旧:奄芸郡田井郷)~
つじ農園のある集落は、1000年以上前からその営みを続けていたとされています。

津市大里睦合町山田井地区は、以前は奄芸郡田井郷と呼ばれ、1000年前の平安時代の辞書「倭名類聚抄」にその名が記されています。

この地域は温暖な気候で災害もなく、古くから農産物の栽培がおこなわれてきました
東海地方に甚大な被害をもたらした、伊勢湾台風の時にもほとんど被害のなかった安全な地域です。

そのせいか、この地域の人々は、やさしい雰囲気で今もかわらず暮らしが続いています。

田んぼの境界線を走る紀勢本線は和歌山まで続く

低地の田んぼと小高い林が懐かしく感じる風景

延喜式の多為神社は集落の人々が共同で守っている

千年村プロジェクト

このような古い集落を研究し、「長期にわたって持続してきた優れた生存立地を客観的に見出す」活動をしている団体があります。

千年村プロジェクト団体は、建築、造園、民俗学などの研究者の集団で、全国に数多くある「無名の」しかし「健全な」地域を多く発見しています。つじ農園が拠点とする集落は、この千年村プロジェクトにより「千年村」の認証を受けました(2017年)。

自分たちの地域がそんなに長く続いているなんて、住んでいる人たちも驚きです。
また認証受け以来、他の地域の千年村との交流も少しずつ始まり、地域の活性化につながっています。

このような活動を通じて、これまで続いてきた環境、自然景観を守っていくのもお米作りをしている私たちの使命だと感じています

千年村プロジェクト http://mille-vill.org/

国立図書館 「倭名類聚抄」

古い資料からつじ農園のある田井村の文字が確認できる

国立図書館データベース「倭名類聚抄」(このうち、コマ番号41) https://dl.ndl.go.jp/

地元大学との連携

地元三重大学との連携でおいしいお米を作る研究をしています。代表の辻をはじめ、スタッフや仲間もそれぞれ社会人学生として、大学院研究科で日々学んでいます。また、授業や共同研究を受け入れ、作物や土壌、農村についての議論を重ねています。

生物資源学研究科の飯島研究室と渡辺研究室は、つじ農園と共に、「近接リモートセンシグによる水田稲作地の生育診断方法の開発」をテーマに、UAV(無人航空機)を用いた生長量,植生指標,圃場地形等のリモートセンシング観測と地理情報解析」「地理的条件による稲作の分光放射観測,気象観測,土壌の養分と物理性の分析を行い,生育前後の違いや収穫されたお米の食味の分布に関する解析」を行うことで、おいしいお米を作るためのデータの収集と分析を行っています。

三重大学 http://www.mie-u.ac.jp/kouken/h30-34.html

また、学生がフィールドに出て学ぶ機会を作る社会調査演習という授業(生物資源学研究科 関谷研究室、中島研究室)では、学生が農園の課題を抽出し、農園や外部のデータを統計的手法を用いて解析することで、各課題の解決方法を提案するという試みが行われています。
毎日のことだからこそ気づかなかったり、見落としていたりする問題を若い目で点検してもらい、業務の改善につなげています。

農の改善は、短期的に結果が出るものは多くありません。上記のような取り組みは結果が出るまでに長い時間がかかりますが、それだけに実りの多いものになるでしょう。

フィールドで稲の実測をしています。

空中から撮影したデータを見て議論

データ分析とともに、実際の作業も体験します

IT技術・ドローンなどの活用

世界中で農業生産のありかたが変わってきています。

特にIT技術を中心とした生産設備や管理装置など、他分野で使われている技術を農業に持ち込む取り組みが多く行われています。

これらはまだまだ黎明期で、本当の意味で農業生産の現場で使えるものは、まだまだ少ないと感じています。それでもなお、新しい技術で未来の農業を形作る取り組みは非常にエキサイティングな体験です。

つじ農園は農業ICTを強力に推進するドローン・ジャパン株式会社の「ドローン米プロジェクト」に参加しています。

近年、技術発展が目覚ましいドローンを稲の栽培管理に活用しようという取り組みで、つじ農園はその実証フィールドとしての役割も担っています。

ドローンに特殊なカメラをつけて、稲の葉が反射する光を撮影します。
稲の葉は目で見ると緑に見えますが、実はいろいろな光を反射していて、それらを複数のレンズで別々にとらえたものをコンピューターで演算します。

撮影する写真は1haあたりおよそ300枚。
膨大な写真データを組み合わせ、その結果を色別に表示すると、生育の良し悪しが地図となって表示されます。
こうして得られた結果を基に、追加で作業を行ったり、秋冬の作業方法を決定したり、植える品種を工夫したりという、生産の意思決定に活用しています。ドローン・ジャパン社では、発展の目覚ましい世界中の農業ソフトウェア会社やドローンメーカーとパートナーシップを組み、数年かけて国内外で栽培される作物のセンシングを行っています。

これまでに取得した農地データは数万ヘクタール。ドローン・ジャパン社の保有するビッグデータは農業生産の手法に大きな変化をもたらすでしょう。

つじ農園は現場パートナーとして日々実証と議論に参加しています。

ドローン米プロジェクト https://drone-rice.jp/

2021年4月に日本農業情報システム協会様より、スマートファーマー優秀賞をいただきました。
第1回スマートファーマーアワード https://jaisa.org/smart_farmer_award_1st/

授賞式の様子はこちら https://youtu.be/m4Wg6BrxTu4?t=3926

ドローンを飛ばし広い敷地を効率良くカバー

撮影した写真から生育具合が地図で表示される

収集した情報をもとに様々な研究がおこなわれる

コミュニケーション

つじ農園ではお客様、仲間、地域のつながりを広げるために様々な催しをおこなっています。

お米と美味しいものをお腹いっぱい食べるイベント「無限めし祭り」、新米を音楽とともに楽しむ「たらふく収穫祭」などつじ農園主催のイベントをはじめ、全国の催事、食のイベント、展示会などへの出展など様々な活動をおこなっています。

食と音楽などの文化芸術をつなぐ活動を現代に合わせた形で行うことが、豊かな社会を作る一助となると考えています。

いくらおにぎりを作っても間に合いません

食と音楽を同時に楽しむ新しい試み

もみ殻などで子供たちが遊べるスペースも

デザインワーク

農作物に顔はありません。高いお米も安いお米も一見した見ためはすべて同じです。
しかし生産者の私たちには自分たちが作る農作物が、どこかこちらに微笑みかける表情が見えるような気がします。

つじ農園ではそんな気持ちを商品を買われるお客様にも味わってほしいと思い、パッケージや印刷物などのデザインワークにも力を入れています。

デザインチーム「オルガンファン」の協力を得て、プロダクト、Web、イラストなどを総合的に作り出すことで私たちの考えや想いを具現化させています。

この試みは楽しく仕事ができるだけでなく、実際のマーケーティングの場でもコミュニケーションが広がり、農園と地域の発展に大きな影響を与えています。

食品だけでなく全ての製品がこのようなデザインワークをおこなえば、日本中が元気に明るく毎日がお祭りのようになるのではと考えています。

OrganFan | オルガンファン https://organfan.jp/

アイデアを持ち寄り、様々なテイストでデザイン

自分たちで作れるものはすべてハンドメイド

ひと目でお米と分かる美味しそうなパッケージ

情報を見やすく発信するホームページ

賑やかな祭りを表現したイベントの印刷物

農作業にも家事にも大活躍の手ぬぐい